一言でいうと
「将来の夢を持とう」「目標を高く持とう」といった、子どもの志向性(aspiration)に働きかける介入です。学力への効果はほぼゼロと報告されています。これは「夢を持つことが無意味」という意味ではなく、志向性だけを変えても学力には結びつかないという知見です。
なぜ効果がないのか
多くの子どもは既に「将来◯◯になりたい」という夢を持っています。問題は夢がないことではなく、夢と日々の学習をつなぐ具体的な戦略や支援がないことです。
- 「夢を持とう」と言われても、具体的に何をすればよいか分からない
- 志向性が高くても、学習方法が分からなければ行動に結びつかない
- 目標だけを掲げるアプローチは、達成できなかった時にかえって自己肯定感を下げるリスクがある
日本の小学校との関連
キャリア教育や「将来の夢」を書かせる活動は日本の小学校で広く行われています。これらが無意味だということではなく、以下の視点が重要です。
- 夢を語らせる活動だけでは学力は上がらない
- 夢と学習を接続する具体的な行動計画(何をどう勉強するか)とセットにする
- メタ認知指導や学習戦略の指導と組み合わせることで初めて効果が出る
- 「夢がない」子を問題視するのではなく、目の前の学習そのものに意味を見出せる指導を優先する
研究からわかっていること
- EEF Toolkitでは、志向性への介入の効果は**±0ヶ月**と報告されています
- 子どもの志向性自体は既に高いことが多く、「もっと高くする」余地が限られている
- 効果が出るのは、志向性の変化と具体的な学習支援が組み合わさった場合のみ
- 志向性だけに焦点を当てた介入は、費用対効果が低い
注意したいこと
- この結果は「夢を持つことに意味がない」という意味ではありません
- キャリア教育そのものを否定するものではなく、学力向上の手段としては効かないという限定的な知見です
- 「夢を書かせて終わり」ではなく、具体的な学習行動への接続が必要です
- メタ認知(+7ヶ月)や自己調整学習と組み合わせることで初めて意味を持ちます
主な参考研究
- EEF (2021). Aspiration interventions: Evidence review. — 効果量±0ヶ月。子どもの志向性は既に高い場合が多く、介入の余地が限られることを指摘。
- Gorard, S., See, B. H., & Davies, P. (2012). The impact of attitudes and aspirations on educational attainment and participation. Joseph Rowntree Foundation. — 志向性と学力の相関は見られるが、志向性を変えることで学力が変わるという因果関係は支持されないことを示した。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 特別活動編 — 学級活動の内容に「一人一人のキャリア形成と自己実現」が含まれています。志向性だけでなく、具体的な行動と結びつけることが重要です。