一言でいうと
人間の脳には「言葉で処理する回路」と「イメージで処理する回路」があり、両方を使った方が記憶に残りやすくなります。 説明を聞くだけでなく図を見る、文章を読むだけでなく絵を描く——この組み合わせが学習を強化します。
なぜ効果があるのか
Paivioの二重符号化理論によれば、人間は言語的情報と視覚的情報を別々のチャンネルで処理します。両方のチャンネルで符号化された情報は、片方だけの場合より記憶の手がかりが多くなり、想起しやすくなります。 Mayerのマルチメディア学習の研究でも、「言葉+図」は「言葉だけ」より一貫して学習効果が高いことが示されています。 ただし、図と言葉が無関係だったり、情報が過剰だったりすると逆効果になることもあります。
日本の小学校で取り入れるヒント
- 理科の実験手順を、文字だけでなく簡単な図解と一緒に提示する
- 社会科で歴史の流れを学ぶとき、年表と合わせて絵や写真を添える
- 子どもに「今学んだことを絵と言葉の両方で説明してみよう」と促す
- 算数の文章題で、問題文を図や線分図に表す活動を日常的に取り入れる
- 板書で色チョークや図解を効果的に使い、言葉だけの板書にならないよう意識する
研究からわかっていること
- 「言葉+関連する図」は「言葉だけ」より約4ヶ月分の学習効果の上乗せがあります。
- ただし「装飾的な図」(内容と無関係なイラスト)には効果がなく、むしろ注意を散らす可能性があります。
- 図を「見るだけ」より「自分で描く」方が効果が高い傾向があります。
- 初学者には特に効果が大きく、すでに知識のある学習者には効果が小さくなる傾向があります。
注意したいこと
- 「とにかく絵を描かせればよい」わけではありません。内容と関連した図を、学習目標に沿って使うことが大切です。
- 情報を詰め込みすぎると認知負荷が上がり、逆効果になります(冗長性効果)。
- デジタル教材ではアニメーションや動画が多用されがちですが、学習者が自分のペースで処理できることも重要です。
主な参考研究
- Mayer, R. E. (2009). Multimedia Learning (2nd ed.). Cambridge University Press. — マルチメディア学習の12原則を体系化。「言葉+図」の効果と、効果的な組み合わせ方の条件を実証的にまとめた基本文献。
- Clark, J. M., & Paivio, A. (1991). Dual coding theory and education. Educational Psychology Review, 3(3), 149–210. — 二重符号化理論の教育への応用を体系的に論じた論文。言語と視覚の二つのチャンネルが学習を強化するメカニズムを解説。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 総則編 — 情報活用能力の育成や、ICTを活用した学習活動の充実が求められています。二重符号化の原則は、視覚教材やデジタルコンテンツを効果的に設計・活用する際の理論的基盤となります。