一言でいうと
子どもを学力レベルによってグループ分けし、それぞれの到達度に合わせた指導を行う方法です。日本では算数の「習熟度別指導」として広く実施されていますが、学力への効果は**+1ヶ月と非常に小さい**ことが研究で示されています。
なぜ効果が小さいのか
「レベルに合わせれば効率的に学べる」という直感に反して、効果が小さい理由は:
- 上位グループはやや伸びるが、下位グループは伸びにくい。全体として見ると効果が相殺される
- 下位グループに配置された子の自己肯定感が低下し、学習意欲が下がる
- グループが固定化されると、下位から上位への移動がほとんど起きない(ラベリング効果)
- 教師の期待が無意識にグループによって変わってしまう
日本の小学校で取り入れるヒント
習熟度別指導そのものを否定するわけではありませんが、以下の工夫が必要です。
- グループを流動的に運用する(単元ごとに入れ替え、固定化しない)
- 「できない子のグループ」というラベリングを避ける。名称と伝え方に配慮する
- 下位グループの指導こそ、経験豊富な教師が担当する(逆になりがち)
- 習熟度別の時間を限定し、異質グループでの学び合い(協同学習)と組み合わせる
- 効果が+1ヶ月しかないことを踏まえ、他の介入(フィードバック、メタ認知)に時間を振る判断も重要
研究からわかっていること
- メタ分析では効果量+1ヶ月。30項目中で最も効果が小さい部類です
- 上位の子には正の効果、下位の子には負の効果が出る傾向(格差が拡大する方向)
- 学級内の一時的なグループ分けは、学級間の固定的な分けよりやや効果が大きい
- 効果は教師の指導力と、グループの流動性に大きく依存します
注意したいこと
- 「習熟度別にすれば学力が上がる」という前提は研究と整合しません
- 特に下位グループの子への影響(自己肯定感・学習意欲)に細心の注意が必要です
- 日本の算数で広く実施されている実態を踏まえ、「やめるべき」ではなく「やり方を改善すべき」と捉えるのが現実的です
主な参考研究
- Steenbergen-Hu, S., Makel, M. C., & Olszewski-Kubilius, P. (2016). What one hundred years of research says about the effects of ability grouping and acceleration on K-12 students’ academic achievement. Review of Educational Research, 86(4), 849–899. — 100年分の研究を統合したメタ分析。能力別グループ編成の効果は全体的に小さいことを確認。
- EEF (2021). Setting and streaming: Evidence review. — 効果量+1ヶ月。上位には正、下位には負の効果で相殺される構造を指摘。
- Ireson, J., & Hallam, S. (2001). Ability grouping in education. Paul Chapman Publishing. — 能力別グループ編成の教育社会学的分析。固定化のリスクを詳述。
関連する学習指導要領
- 小学校学習指導要領解説 総則編 — 「個に応じた指導の充実」の節で、習熟の程度に応じた指導の工夫が言及されています。
- 小学校学習指導要領解説 算数編 — 算数科における個別最適な学びの充実が求められています。